細雪 雪子 性格 14

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昭和11年秋~昭和16年春までの、大阪の没落旧家・蒔岡家の四姉妹の日常を描いた『細雪(ささめゆき)』。, 『細雪』は、1943年に雑誌『中央公論』(1月号・3月号)、1947~1948年に雑誌『婦人公論』(1947年3月号~1948年10月号)で発表された谷崎潤一郎の長編小説です。, 大阪の旧家を舞台に、四姉妹の日常が描かれています。特に、次女・幸子の目線から、結婚できない三女の雪子や自由人の妙子の様子が語られています。, 1950年から3度に渡って映画化されており、1950年版はYouTubeで観ることができます。文スト(文豪ストレイドッグス)での谷崎の異能力は、「細雪」と言うそうです。Kindle版は上巻を無料¥0で読むことができます。, 谷崎潤一郎は、反道徳的なことでも美のためなら表現するという「唯美主義」の立場を取る、耽美派の作家です。社会から外れた作品を書いたので、「悪魔」と評されたこともありました。, 最初の妻・千代子の妹に惹かれていた谷崎は、千代子を友人で作家の佐藤春夫に譲るという「細君(さいくん)譲渡事件」を引き起こしました。また大の美食家で、食には大変なこだわりを持っていた人物です。, さらに、書いている作品のイメージに近い家に移り住み、生涯で40回以上の引っ越しをしました。谷崎は漢文や古文、関西弁を操ったり、技巧的な形式の作品を執筆したりして、日本を代表する作家とされています。, 大阪の蒔岡家は、衰退しつつある名家です。蒔岡家の三女の雪子は30歳を過ぎても未婚のままで、四女の妙子は駆け落ちなどのスキャンダルが絶えない破天荒な娘です。, 雪子のもとには次々と縁談が舞い込んできますが、なかなか結婚するまでには至りません。次女の幸子は、そんな妹たちを見守ります。, この先、谷崎潤一郎『細雪』の内容を冒頭から結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください。, 蒔岡(まきおか)家は、大阪の商家でした。大正時代に非常に栄えましたが、大正末期からは没落してしまいます。, そして長女・鶴子の夫は、蒔岡家の当主であるにもかかわらず、銀行員です。次女・幸子の夫は会計士で、1人娘と芦屋に住んでいます。, 三女・雪子、四女・妙子も芦屋で暮らしています。次女・幸子は、未婚の妹たちの行く末を心配しています。何度か雪子には決まりかけた縁談がありましたが、理想の高い雪子はすべて断っていました。, そんな時、雪子に久しぶりの縁談が持ち掛けられます。相手は、沢崎(さわざき)という45歳の資産家でした。幸子は、「なぜそんなお金持ちが、うちと縁組しようとするのだろう?」と疑問に思います。, 見合いの当日、沢崎は着古した洋服で来ました。今回の見合いを軽く考えているのです。また、沢崎は雪子を明らかに気に入っていない様子でした。, 見合いが終わったあと、沢崎から縁談の断りの手紙が届きます。それは短い事務的なものだったので、幸子は不愉快になりました。, ある日、幸子が劇を観に行くと、妙子と奥畑(おくはた)という男が一緒にいるところを見かけます。奥畑は金持ちの三男で、かつて妙子が駆け落ちした相手でした。, 奥畑は遊んでばかりのお坊ちゃまなので、妙子がひそかに奥畑と関係を続けていることを知った長女・鶴子は、「妙子をいま私が住んでいる東京に来させなさい」と幸子に言いました。, そして、もし東京に来ないなら、いま妙子が住んでいる芦屋の家からも追い出せとのことでした。しかし、鶴子の夫と仲の悪い妙子は、「うち、本家と一緒に暮らすぐらいなら死んだ方がましや」と言って、自分でアパートを借りて芦屋を出て行ってしまいます。, 雪子は、45歳の橋寺(はしでら)という製薬会社の重役との見合いを受けました。人柄・外見・財力的に何の問題もない橋寺に、幸子は好感を持ちます。橋寺はあまり乗り気ではありませんが、周囲の協力もあって何とか縁談は上手くいきそうになりました。, ところが幸子の留守中、橋寺が雪子に電話をかけます。引っ込み思案の雪子は電話が苦手なので、「はい、あのう……」とあいまいな返事ばかりします。怒った橋寺は、縁談を破棄してしまいました。それを聞いた幸子は、ひどく落胆してしまいます。, その後、雪子は御牧(みまき)という45歳の貴族の男性と見合いをすることになります。しかし、御牧は定職に就かずに遊んでばかりいるので、雪子はあまり前向きになれませんでした。, しかし、御牧は雪子の写真を見て彼女を気に入ったので、御牧・幸子・雪子・妙子は一度食事をすることになりました。雪子は珍しくよくしゃべったので、幸子は手ごたえを感じます。そして、雪子は御牧との結婚を承諾しました。, ところが、結婚が決まっても雪子の気持ちは晴れません。結婚式の衣装を見て「これが婚礼の衣装でなかったら嬉しいのに」とつぶやきます。そして、幸子がお嫁に行くときも、ちっとも楽しそうじゃなかったなと思い返すのでした。, 『細雪』が発表されたのは、終戦直後の1943年です。お国のために質素倹約の生活を送るのが当たり前だった時代でしたが、『細雪』では高価な着物を着たり、立派な弁当を持って優雅に花見に興じるなど、明らかに当時の状況とは異なる生活が描かれています。, これが国の戦争に対する姿勢に反発していると判断され、『細雪』は発禁(発売頒布禁止)処分を受けました。しかし、谷崎はこの処分に屈せず執筆を続け、数年かけて書き上げました。, 『細雪』には、平安貴族さながらの優雅で豪華な生活が描かれているため、本作は「現代版源氏物語」とも呼ばれています。, 上中下巻にわたって、雪子と妙子がひたすら結構相手をさがすという物語です。谷崎は、芥川龍之介と「理想の小説」について議論を交わしました。, そこで、芥川は「作りこまない詩のような小説」を理想としたのに対し、谷崎は「起承転結のはっきりした小説」を理想としました。, 確かに、谷崎の小説は起伏があるものが多いですが、『細雪』は例外です。雪子が縁談を受けては断っての繰り返しで、話が全く前に進まないからです。, ただ、だからこそ1つ1つの出来事が丁寧に描かれますし、没落しているとはいえお金持ちの優雅な生活が描かれています。人物の心の動きが良く写し取られているので、それを追っていくのが面白いです。, そしてこの作品の面白いところは、ラストの1文です。上中下巻に渡ってお金持ちの優雅な生活が描かれているのに、その下巻の一番最後は「結婚が決まった雪子の下痢が止まらない」というものなのです。, それまでの風雅な雰囲気は少しも感じられず、非常に滑稽です。この作品はまだきちんと読めていないので、今後「なぜ下痢の話で締めたのか」について考察したいと思います。, 当時の結婚観や見合いの様子を知れる貴重な資料です。上巻のみ青空文庫にあるので、ぜひ読んでみて下さい!, 次回のコメントで使用するためブラウザーに自分の名前、メールアドレス、サイトを保存する。, 本が大好きな女子大生です。 図書館にこもって貪るように絵本を読んだ幼稚園児時代、学校の図書室の本を全制覇することを目標にした小学生時代を過ごし、立派な本の虫になりました。.

理由はたぶん、二つあるだろう。一つは私が関西弁の壁を超えたこと。関西に7年も住んでいるうちに、以前は読んでも入ってこなかった文中の関西弁が、生きた言語として頭の中で再生されるようになった。お陰ですらすらと苦なく読めるようになった。もう一つは年齢的なものだろう。私はいま29歳。「細雪」の雪子や妙子が登場したときの年齢に当たる。そのせいか、どこか他人事には思えない心境でページをめくり続けていたのだった。つらつらと紡がれる言葉で物語は進んで行くさまに、NHKの朝ドラを見ているような中毒性の感覚を覚えた。, あらすじといってもまとめられる話じゃない。大戦前の時代、兵庫県は芦屋に暮らすお金持ち美人四姉妹の日常が華やかにつらつらと描かれている。上から鶴子、幸子、雪子、妙子の四姉妹は大阪船場でかつて名の通った商家の娘だった。いまや家は陰りの一途を辿り、雪子と妙子の2人はとっくに適齢期を過ぎているというのにまだ嫁に行っていない。, 長女鶴子は5人の子を抱えるおっとりとした女性。良妻賢母的な価値観を持つ。他の三姉妹とは少しだけ距離があるような感じ。次女幸子はほとんど「細雪」の主人公だ。谷崎潤一郎的には雪子が主人公らしいが、いや全然幸子でしょ。幸子目線でものが描かれているように思えた。夫、貞之介と仲睦まじく、一人娘の悦子がいる。妹たちの結婚問題に気を揉み、本家の姉と義理の兄の面子にも気を使っている。三女雪子は線が細くか弱い印象を与える日本美人。幼い頃に亡くなった四姉妹の母親の面影を最も色濃く持ち、父親からはなんとなく一番可愛がられてきた。学があり芯の強いところがあるが、プライドが高いのとコミュ障すぎているのが欠点。三十路になっても見合い話をあれやこれやの理由で断り続けている。四女妙子、通称こいさんは一番小柄ながらも利発で外向的な性格。芸術家肌で、人形制作で一稼ぎした。また日本舞踊と洋裁を続けており、四姉妹の中ではサバサバと現代的な性格をしている。, そんな四姉妹が生きているのが「細雪」の世界。三女雪子の婚活話と四女妙子の破天荒な生き方に上の姉2人が巻き込まれる話を縫うようにして、戦前当時の芦屋の上流コミュニティでの人々の生活の様子が描かれている。お手伝いの女中がいるのが当たり前で、全く働かなくても良い大人の男女が当たり前にいるような世界。とっても美味しそうなお寿司やグリルなどの高級料理やら、近所に外国人が居て、特に珍しがりもせず交流している日常が描かれている。谷崎潤一郎作品を初めて通読した私としては、なぜ谷崎潤一郎はこの話を描こうと思ったのだろうかと疑問に思った。それについてはあとがきと解説を読んだら多少スッキリしたのと、ネットで調べたら次女幸子さんのモデルは谷崎潤一郎の奥さんだったということで、よっぽど話の題材として描きたくなるような魅力的なモデルとなる女性がいたのだろうと納得しといた。美しい存在がキャッキャしている様子がシンプルに尊いと思うところがあったのかもしれない。そうだとしたら今にも通ずるところのある感覚だ。時々ギョッとするようなグロテスクな描写、生々しい手術の様子や下痢の様子などが出てくるのはあえて美しいものを際立たせるための工夫なんじゃなかったのかと私は勝手に解釈した。, 長編小説では特に、読み進めていくうちにいつのまにか、登場人物が友人のように思えていることがある。「細雪」にもお気に入りのキャラクターが何人かできたけど、雪子には特に同情した。ちなみにそれ以外のお気に入りは悦子、キリレンコ妹、ルミーさん、お春どん、櫛田医師ね。, 私にとって「細雪」は、周りから結婚を急かされる雪子の婚活話としての印象が濃く残るものだった。雪子は周りの人が親切心で持ってくる見合い話を、家柄が微妙だとか顔が好きじゃないとかなんのかんのでことごとく断り続けて三十にもなってしまったお嬢さん。しかも本人は、「見合い?行っても構いませんけど」というスタンスで、なんとか重い腰を上げて呼ばれて行っても、コミュ障なのでニコニコしているか、あのう…はい…程度の相槌程度しか発言できない。それでいて、周りの心配や焦りをよそに、本人は働きもせず幸子の家に転がり込んで、けろっとしている。もっとも当時でそんな振る舞いが出来るのは、四姉妹の家にいくらかの名声と財力があるからだが、いまの時代ならニートだしふてぶてしい事この上ない。, 雪子はうすうす、結婚してしまっては、何かつまらないことになりそうだと思っている節があったような気がしてならない。ふらふらと姉の厄介になりながら、姪のお守りをするのがベストで居心地が良いと、思っていたんじゃなかろうか。自分の女性としての価値は、未婚の神秘性、純潔さにあるのであって、結婚してはそれが損なわれてしまうのではないか、と思っていたのではなかろうか。, なぜそんな女に同情を覚えたのか。わたしにも、家の面子のためにつまらない人と結婚させられるのを理由をつけて断りたい気持ちはわかる。誰かの妻として母としての責任から逃れ、姉の家でゴロゴロニートが居心地良いのはそりゃそうだろうよと思う。それに語学を愛し、少し思想的に頑固なところのある雪子の性質に、わたしはシンパシーを覚えていた。「細雪」はわたしにとって、雪子に同情しつつ、もうちょっとは頑張れよ、そういうところがダメなんだよ、とダメな友達を応援しながら読むような話だった。同時に、雪子の男性へのコミュ障加減には自分の身につまされるところもあり、反面教師のようにもなった。, さて雪子について、読書会で気づかされたものの、とうとうみなさんに問うことが出来ずに終わってしまったことがある。雪子と橋寺氏の破局。あれは、雪子が振ったんじゃなかったのか。わたしはそう読んでいた、橋寺氏が振ったという人の発言を聞いて、たしかにそうも読めるな、と発見があった。雪子サイドの思想なわたしからすれば、…橋寺という人物はなかなか話は面白いし良い人だと思うし、そこいらで結婚しておくのが家の面子的にも、自分の結婚を待たせてしまっている妹のためにも良いに決まっているのはわかるけど、どうやら「女ギャング」的な、気の強い井谷さん達に引っ張り回されるようなスタンスがお好きらしいし、自分にはそんな性質はないからすぐに愛想をつかされてしまうだろう。それに前の奥さんのこともかなり引きずっていらっしゃるようだ、結婚をしたところで愛想をつかされて肩身が狭くなるようなら、未婚の価値を捨ててまで結婚することはないのではなかろうか… と考えていたのでは、と、読んでいた。雪子のことだから、自分の居心地の良さというのは重要視するだろうし、プライドの高さもあるのできっとそうだろうと。だから橋寺から電話が来た時、靴下屋に誘われた時、遺憾無くコミュ障を発揮して嫌われたのにもかかわらず、それに対しての弁解や謝罪を全く行わなかった。コミュ障を治そうというスタンスさえ感じられなかった。自分はそういう性質だしそれでいい。たまたま今回も合わなかったのだから仕方ない、また姉さんのところにいりゃあいいわ、程度にけろっとしてしまっている。たしかに、橋寺が愛想を尽かしてもういいですと憤慨したのは確かだけど、それに対して態度の改善をあえてしなかった雪子が、橋寺を意図的に振っていたと思えたのだった。そこら辺がわたしも近いところがあるのでまったくわたしの方も人生うまくいかないのだけどそれは余談として…。他の読者はどう捉えるだろうか。, 「細雪」を一気に読むことで、長編小説との付き合い方がまた一つわかった気がした。長編小説は最後まで読むと、物語の中のいくらかの登場人物と読み手の間に、短編では生まれ得ない、古くからの知人に対しての友情のようなある関係が生まれることになる。だから、同じ長編小説を読んだもの同士の読書会では、みんな共通の知人のことを話しているような感覚で、ああだこうだ考察できるのが楽しかった。, また余談だけど、読書会で、谷崎潤一郎がマツコデラックスに似てるという発言があった。たしかにビジュアルは似てるし、谷崎潤一郎の、女性に対する鋭い観察眼を持った文章もあり、なんとなく腑に落ちるというかなんというか。谷崎潤一郎はもう亡くなってしまっているので、マツコデラックスが谷崎潤一郎の作品の女性をバッサバッサと切るようなバラエティがあればとても見たい。あ、源氏物語の女達を切るのでも見たいかも。, peephole89さんは、はてなブログを使っています。あなたもはてなブログをはじめてみませんか?, Powered by Hatena Blog 80年の生涯で40回も引っ越しをしたり、奥さんを友達に譲ったり、度が過ぎる美食家だったりと、やることが規格外の谷崎潤一郎。 今回は... https://jun-bungaku.jp/wp-content/uploads/2020/06/png_file-2-e1593522396847.png, 子供の頃、『蜘蛛の糸』に親しんだ人は多いのではないでしょうか?「教訓めいた事言ってるようだけど、結局何が言いたいのか分からない!」と思った人 …, 芥川の遺書にあった「ぼんやりとした不安」が表れている『トロッコ』。 今回は、芥川龍之介『トロッコ』のあらすじと内容解説、感想をご紹介し …, 『桜桃』の読み方は、「おうとう」です。わずか10ページの短編小説で、主人公は太宰作品にお馴染みのクズ人間です。 今回は、太宰治『桜桃』 …, 高校の教科書で一度は読んだことのある人が多い、夏目漱石『こころ』。教科書には途中からしか載っていないので、全文読んだ人は少ないかもしれません …, 『うもれ木』は、一葉が有名になるきっかけとなった作品です。 今回は、樋口一葉『うもれ木』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します! 弱々しくあえかな印象を抱かせる雪子であるが、 折口は雪子に 「根 強い性格 」 や「執拗 」 さを認めており、菊池は「芯に固い自己 」 を 持つ「 〈しぶとい〉存在性 」 を指摘する。こ の よ う な 気 質 が 雪 子 に 備 わ っ て い る と 考 雪子の妙子の世話係。 雪子. なお、椎名誠の作品はどれも読みごたえがあって中学生でも面白く読めるので、その他の作品もぜひ読んでみましょう。, 「吾輩は猫である。まだ名はない。」の書き出しで始まる「吾輩は猫である」は夏目漱石の初期の代表作ですね。 ただ、今から100年以上前に書かれた作品ですから、文章が難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 村上春樹の長編小説「騎士団長殺し」は、村上春樹のファンだけでなく、小説ファンが待ちに待った最新作ですね。 ブログを報告する.

Copyright © CyberAgent, Inc. All Rights Reserved. おとなしくて口べたの、いかにもお嬢様といった性格の蒔岡三女。 鶴子の夫を嫌煙しているため幸子の分家に出入りする。 妙子. この記事では、「吾輩は猫である」のあらすじについて簡単に紹介するとともに、ネタバレを含む結末もお教えします(ネタバレ部分については読みたい方だけ読んでくださいね), 「罪と罰」は、日本でもこの作品を元にしたドラマや漫画が作られていますね。 ただ、この作品で夏目漱石が伝えたかったことや、結末については知らない人が多いのではないでしょうか。 映画「細雪」のあらすじで紹介した四姉妹の四女・妙子は、駆け落ち騒ぎや複数の男性との恋愛など、奔放な性格です。何度も恋愛トラブルを起こした妙子ですが、バーテンダーの三好とのことは真面目に考えたようで、家を飛び出して三好と

彼女はしばしば、貞之助のことや悦子のことよりも、雪子のことや妙子のことを心に懸けている時間の方が多いのではないかと思って、自ら驚くことがあったが、正直に云って、この二人の妹は彼女に取って、悦子にも劣らぬ可愛い娘であったと同時に、無二の友人でもあったと云えよう。彼女は今度一人ぼっちになって見て、始めて自分が、友達らしい友達を持っていないこと、ーー形式的な交際以外には奥様同士の附合いと云うものを余りしていないこと、ーーに心づいて、不思議に感じたのであるが、考えて見れば、それは二人の妹がいたためにその必要がなかったからであった。(中、227ページ), 「こいさん、頼むわ。ーー」鏡の中で、廊下からうしろへ這入って来た妙子を見ると、自分で襟を塗りかけていた刷毛を渡して、其方は見ずに、眼の前に映っている長襦袢姿の、抜き衣紋の顔を他人の顔のように見据えながら、「雪子ちゃん下で何してる」と、幸子はきいた。「悦ちゃんのピアノ見たげてるらしい」(上、5ページ), 「どうしょう、どうしょう」と、幸子は鼻を鳴らしたが、雪子はまるで他人事のように澄まし込んでいた。「なあ、雪子ちゃん、どない云うとこう」「どないなと云うといて」「そうかて、あの人、味善う云わなんだら承知しやはらへんねん」「そこのとこ、ええように頼むわ」「そんなら、兎に角、明日のとこだけ見合せてもろとくわな」「ふん」「ええやろ、それで」「ふん」立っている幸子には、坐って下を向いている雪子の表情を、どうにも読み取りようがなかった。(上、43ページ), ・・・・・・・・・見渡す限り、ひとすじの川の縁に沿うて、何処迄も何処迄も、果てしもなく両岸から飛び交わすのが見えた。・・・・・・・・・それが今迄見えなかったのは、草が丈高く伸びていたのと、その間から飛び立つ蛍が、上の方へ舞い上らずに、水を慕って低く揺曳するせいであった。・・・・・・・・・が、その、真の闇になる寸刻前、落ち凹んだ川面から濃い暗黒が這い上って来つつありながら、まだもやもやと近くの草の揺れ動くけはいが視覚に感じられる時に、遠く、遠く、川のつづく限り、幾筋とない線を引いて両側から入り乱れつつ点滅していた、幽鬼めいた蛍の火は、今も夢の中にまで尾を曳いているようで、眼をつぶってもありありと見える。(下、34~35ページ).

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